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TITLE 70年代生まれ建築家

TITLE4月号「70年代生まれ建築家」のページに掲載されました。
http://www.bunshun.co.jp/mag/title/title0404.htm

 マドリックス、という1枚のレジャーシートがある。マトリックスではなく、マドリックス。
間取りがペイントされていて、公園でも道端でも、このシートを敷けばたちまちそこがワンルームマンションになる。
単なるアイディアグッズのようだが、実はこのシート、建築家が大マジメに考えて作ったもの。
笠置秀紀さん、宮口明子さんのふたりによる建築家ユニット「ミリメーター」の作品だ。
渋谷のセンター街に座り込んでいる、俗に「地べたリアン」と呼ばれる女子高生たちを見て思いついたという。
「みんなで集まってワイワイ、とても楽しそうにしてました。ああ、ここはみんなのリビングだな、って思ったんです」。

 ミリメーターのふたりは、壁で区切って空間を作り、そこに役割を与えてきた近代建築の在り方に疑問を感じているという。
もともとすべての空間はつながっているはずなのに、壁で仕切って、「ここがリビングです」と決めたとしても、
もし、そこに、家族の会話がなければ、ほんとうの意味でリビングルームと言えるだろうか。
それに比べて道端の女子高生たちの輪は、間違いなくリビングの役目を果たしている、
地べたに座る彼女たちを見る大人の目は、冷ややかだけれども……。
「アジアでは地べたに座るのが普通という場所はたくさんあるし、日本でも江戸時代には地べたリアンは多かったはず。
どこかで倫理観が変わってしまったんでしょうね」。彼らに言わせれば、道端は学校より健全な場所。
「学校もオフィスも家も、決まった人たちが決まったことをするための空間です。
それに対して道は、いろんな人がいろんなことをしている、とても魅力的な空間だと思うんです」。

 そんな彼らに、「もし僕がふたりにお任せで住宅を建てるとしたら、どんな住宅を作ってみたい?」と聞いたら、「3坪の土地をバラバラに3つ買ってください」という答が返ってきた。たとえば、その3カ所に、寝室、書斎、ゲストルームを建てる。それぞれの間は離れているから、いちいち通わなければならない。でも、ホームパーティーを開くにはゲストルームへ、仕事は書斎でと、気分を変えることができる。そのとき、公共の道路が我が家の廊下になり、途中にある公園が自分の庭になる。3坪の土地を3つ買うだけで、小さな街がまるごと我が家になってしまう。「決して奇をてらっているわけじゃなくて、この家が10年後、20年後のスタンダードになるんだ、という気持ちで考えています、時代は急速に変化するし、社会の仕組みも変わっていきます。でも、一度建ててしまった住宅は、10年や20年で壊すわけにはいきません。だから、時代が変わっても大丈夫なように、ちょっと遠くを見て設計をしたいんです」

 文字通り「近代建築の壁」を、たった1枚のレジャーシートでひらり、と越えてしまうミリメーター。渋谷の道端に座っている彼らは、実は未来の大物建築家、なのだ。

TEXT:山本雅也

TITLE4月号「70年代生まれ建築家」のページに掲載されました。
http://www.bunshun.co.jp/mag/title/title0404.htm

 マドリックス、という1枚のレジャーシートがある。マトリックスではなく、マドリックス。
間取りがペイントされていて、公園でも道端でも、このシートを敷けばたちまちそこがワンルームマンションになる。
単なるアイディアグッズのようだが、実はこのシート、建築家が大マジメに考えて作ったもの。
笠置秀紀さん、宮口明子さんのふたりによる建築家ユニット「ミリメーター」の作品だ。
渋谷のセンター街に座り込んでいる、俗に「地べたリアン」と呼ばれる女子高生たちを見て思いついたという。
「みんなで集まってワイワイ、とても楽しそうにしてました。ああ、ここはみんなのリビングだな、って思ったんです」。

 ミリメーターのふたりは、壁で区切って空間を作り、そこに役割を与えてきた近代建築の在り方に疑問を感じているという。
もともとすべての空間はつながっているはずなのに、壁で仕切って、「ここがリビングです」と決めたとしても、
もし、そこに、家族の会話がなければ、ほんとうの意味でリビングルームと言えるだろうか。
それに比べて道端の女子高生たちの輪は、間違いなくリビングの役目を果たしている、
地べたに座る彼女たちを見る大人の目は、冷ややかだけれども……。
「アジアでは地べたに座るのが普通という場所はたくさんあるし、日本でも江戸時代には地べたリアンは多かったはず。
どこかで倫理観が変わってしまったんでしょうね」。彼らに言わせれば、道端は学校より健全な場所。
「学校もオフィスも家も、決まった人たちが決まったことをするための空間です。
それに対して道は、いろんな人がいろんなことをしている、とても魅力的な空間だと思うんです」。

 そんな彼らに、「もし僕がふたりにお任せで住宅を建てるとしたら、どんな住宅を作ってみたい?」と聞いたら、「3坪の土地をバラバラに3つ買ってください」という答が返ってきた。たとえば、その3カ所に、寝室、書斎、ゲストルームを建てる。それぞれの間は離れているから、いちいち通わなければならない。でも、ホームパーティーを開くにはゲストルームへ、仕事は書斎でと、気分を変えることができる。そのとき、公共の道路が我が家の廊下になり、途中にある公園が自分の庭になる。3坪の土地を3つ買うだけで、小さな街がまるごと我が家になってしまう。「決して奇をてらっているわけじゃなくて、この家が10年後、20年後のスタンダードになるんだ、という気持ちで考えています、時代は急速に変化するし、社会の仕組みも変わっていきます。でも、一度建ててしまった住宅は、10年や20年で壊すわけにはいきません。だから、時代が変わっても大丈夫なように、ちょっと遠くを見て設計をしたいんです」

 文字通り「近代建築の壁」を、たった1枚のレジャーシートでひらり、と越えてしまうミリメーター。渋谷の道端に座っている彼らは、実は未来の大物建築家、なのだ。

TEXT:山本雅也



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2004/04/01


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