Interview about pedal

石川初

自転車と都市に迫るインタビュー。ランドスケープ、建築、美術、政治学、社会学、テクノロジー、自転車競技などさまざまな領域の専門家との対話を行い、都市と身体をつなぐ自転車、都市の観測装置としての自転車を浮き彫りにする試み。 […]

自転車と都市に迫るインタビュー。
ランドスケープ、建築、美術、政治学、社会学、テクノロジー、自転車競技などさまざまな領域の専門家との対話を行い、都市と身体をつなぐ自転車、都市の観測装置としての自転車を浮き彫りにする試み。

石川初|ランドスケープデザイナー・地上絵師
大島芳彦|建築家・ブルースタジオ
小澤慶介|フリーランス キュレーター・AIT
南後由和|社会学者・東京大学助教
大谷和利|テクノロジーライター・原宿AssistOnアドバイザー
佐藤洋一|早稲田大学社会科学総合学術院教授
マイケルライス|自転車選手・俳優
(敬称略)
インタビュアー:mi-ri meter
映像:竹内寿一 久保寺晃一(ta-re)野村朋広(輪+)
制作:堀江大祐
プロデューサー:黒崎輝男
発表:PACIFIC PEDAL LIFE DESIGN 展

自転車の”あの感覚”を僕らは忘れがちだ。

たとえば都市を自転車で駆け巡ると、地形の起伏を流体のように感じることがある。タイヤから伝わる振動で、路面のテクスチャを触っているような感覚に陥ることがある。見ず知らずの人といつのまにかにデッドヒートをして、レースのような興奮を日常の路上で味わってしまう。

あるいは、もっとありふれた感覚、商店街の人並みを自転車で絶妙にすり抜けて行く心地。少し遠くの駅まで漕いだあとの達成感。緩やかな坂を漕がずに下るスピード感。それらは各々の身体に記憶されていながら、日常に埋もれていてあまりに語られることはない。語ろうとする前に、わたしたちはその感覚を思い出したくなって、自転車に乗ってしまっている。

自転車を環境や健康に結びつける前に、この原初的な感覚と体験を解き明かすことが、自転車の本質を浮き彫りにするのではないか。そんな仮定をランドスケープ、美術、映像、政治学、社会学、テクノロジー、自転車競技などさまざまな領域の専門家に投げかけたインタビューである。

「考える自転車」と名付けられて始めたこのインタビューは、脳が考えるのではなく身体が考えている状態を指しているのだと、インタビューをしながら思えるようになってきた。なぜなら歩いている時と比べると、自転車の上の時間は、意外に頭はなにも考えていないことが多いのだ。

しかし身体が考える状態があるとすると、それがどのような状態かを脳で捉え、伝えることは可能だろうか。インタビュイーたちはまるで自転車を漕ぐように、時にスムーズに、時に苦しそうに、言葉を身体から紡ぎだしていたように思える。その自転車と都市を巡る思考の軌跡をここに記していきたい。”あの感覚”を思い出すために。

株式会社 小さな都市計画